英文名 | Special Lecture on Molecular Simulation | |
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科目概要 | 未来工学研究科(修士課程)生命データサイエンス専攻修士1年前期、専門科目、選択、講義、2単位 | |
科目責任者 | 渡辺 豪 | |
担当者 | (※は実務経験のある教員) 渡辺 豪、 石井 良樹 | |
講義室 |
材料や生命現象などの自然科学における原子・分子のダイナミクスを考察するため、分子シミュレーションを基盤としたデータサイエンス研究が広く活用されている。本講義では、その分子シミュレーション技術の骨格を形成する物理数学・統計力学・熱力学手法の基礎・応用を学び、それらの手法を目的の分子系で使いこなすための計算技術修得を目的とする。
分子シミュレーションの基礎となる古典力学・統計力学の計算手法とそのコーディング技術について学習する。特に、古典分子力場による分子動力学計算で用いられる方法論の理論基盤と応用例に触れることで、各種パラメータの物理的意味と理論手法の必要性、設定方法を学ぶ。これにより様々な材料、生体分子系の分子シミュレーション研究を実施でき、その内容を統計力学や熱力学と紐づけて説明できる計算科学技術を養う。
各回の講義時に配布する資料を用いて講義形式ですすめる。講義内容の理解と定着を図るために、数回演習課題を配布しつつ、最近の応用例を調べるグループワークを併せて実施し、その内容のプレゼンテーション・質疑応答を通して知識の深化を図る。演習課題については講義内で解説する。
DP1、DP2
回 | 項目 | 内容 | 担当者 | 日時 |
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1 | 分子シミュレーションの概要と変遷の歴史的背景 | 様々な材料、生体分子に適用するために設計されてきた分子シミュレーション技術の成り立ちと計算手法の発展の背景について学ぶ。 | 渡辺 豪 | 4/10④ |
2 | 運動方程式の解法1 | Verlet法、速度Verlet法、蛙飛び法を用いた並進の運動方程式の解法について学ぶ。 | 石井 良樹 | 4/17④ |
3 | 運動方程式の解法2 | 四元数を用いた回転の運動方程式の解法について学ぶ。 | 石井 良樹 | 4/24④ |
4 | 原子間相互作用の取扱いと 長距離力の解法1 | 共有結合性相互作用と非共有結合性相互作用の取り扱いとコーディング技術、演算効率との関係について学ぶ。 | 石井 良樹 | 5/8④ |
5 | 原子間相互作用の取扱いと 長距離力の解法2 | 帳簿法を用いた近距離相互作用の取り扱いと、Ewald法を基にした長距離相互作用の解法、コーディング技術について学ぶ。 | 石井 良樹 | 5/15④ |
6 | 原子間距離の拘束手法1 | 多原子分子系で長時間シミュレーションを実現させるために共有結合を拘束する計算技術、コーディング技術について学ぶ。 | 石井 良樹 | 5/22④ |
7 | 原子間距離の拘束手法2 | SHAKE法、RATTLE法、LINCS法を基にした拘束条件を課す分子シミュレーション手法について学ぶ。 | 石井 良樹 | 5/29③ |
8 | 統計力学条件の制御手法1 | 熱力学量の微視的表現とその統計力学的な揺らぎを学び、シミュレーション規模との関係を理解する。 | 石井 良樹 | 6/5④ |
9 | 統計力学条件の制御手法2 | カノニカルアンサンブルを実現させる熱浴の制御手法とコーディング技術を学ぶ。 | 石井 良樹 | 6/12④ |
10 | 統計力学条件の制御手法3 | 等温等圧アンサンブルを実現させる熱浴・圧浴の制御手法を学び、ミクロカノニカルアンサンブルとの関係について理解する。 | 石井 良樹 | 6/19④ |
11 | 物性解析手法1 | 動径分布関数による分子構造の解析手法を学び、凝縮系の分子間相互作用を評価する計算技術を修得する。 | 石井 良樹 | 6/26④ |
12 | 物性解析手法2 | Green-Kubo公式を用いた輸送係数の解析手法を学び、凝縮系の分子拡散性を評価する計算技術を修得する。 | 石井 良樹 | 7/3④ |
13 | 物性解析手法3 | 熱力学積分法、自由エネルギー摂動法を用いた自由エネルギーの解析手法を学び、凝縮系の分子溶解性を評価する計算技術を修得する。 | 石井 良樹 | 7/10④ |
14 | 実践・応用例1 | これまでに学んできたシミュレーション技術を駆使して材料、生体分子の物性を解析した実践例に触れ、計算から議論できる物性と実在系と比較する応用技術を学ぶ。 | 渡辺 豪 | 7/17④ |
15 | 実践・応用例2 | 分子シミュレーションを応用した最新の研究動向を独自に調査して発表を行い、今後の分子シミュレーション技術の発展可能性について検討する。 | 渡辺 豪 | 7/24④ |
古典力場を用いた分子シミュレーションに用いる計算手法の基礎理論が理解できる。これにより、様々な材料・生体分子の分子シミュレーション研究を行うにあたり、統計力学・熱力学の物性と演算速度の兼ね合いから、計算条件を選択・最適化する計算技術を身につけ、また分子シミュレーションの骨格をなす統計熱力学の理論式をコーディング方法とともに理解し、分子物性の解析効率を高度化するプログラミング技術を修得する。
授業にて実施するレポート課題の消化状況(50%)とプレゼンテーション(50%)の成績から総合的に評価する。
【講義時間外に必要な学習の時間:60 時間】
予習:前回の講義時に指定された事柄について自身で調べておくこと。
復習:配布資料を読み返し、理論式とサンプルプロググラムの式展開を復習しておくこと。
・演習課題については、次の講義で解説・講評を実施する。
・応用例を調べるグループワークを実施し、15回目にて行うプレゼンテーションを通して議論を交わし、質疑応答を経て計算手法の理解を深める。
【関連科目:計算材料科学、生物物理学概論】
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 配布資料あり | ||
参考書 | 分子シミュレーション−古典系から量子系手法まで− | 上田顯 | 裳華房 |
参考書 | コンピュータ・シミュレーションの基礎(第2版): 分子のミクロな性質を解明するために【Kindle 版】 | 岡崎進・吉井範行 | 化学同人 |