英文名 | Computational Materials Science | |
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科目概要 | 未来工学研究科(修士課程)生命データサイエンス専攻修士1年後期、専門科目、選択、講義、2単位 | |
科目責任者 | 渡辺 豪 | |
担当者 | (※は実務経験のある教員) 渡辺 豪、 石井 良樹 | |
講義室 |
有機化合物の分子モデルは量子化学計算から設計されており、近年では計算機能力の向上に伴い、複雑な機能を発現する液晶・高分子の量子計算や相互作用の精密解析、スパコンを用いた自己集合構造の大規模解析が可能になりつつある。本講義では量子化学と凝縮系物理学の理論体系を学び、有機材料を中心とした機能性材料の物性を量子化学計算と大規模系の分子シミュレーションから考察する計算技術修得を目的とする。
有機化合物の相互作用設計に用いられる量子化学と凝縮系物理の理論体系について学習する。液晶・高分子を表現する相互作用の理論化学を、分子軌道法や密度汎関数法の基礎方程式と電子の基底関数系、交換・相関項の計算科学的取扱いと併せて理解することで、適切な近似レベルの量子化学計算から物性解析を行う計算科学の知識と応用力を修得する。また液晶・高分子の物性を理解・解析するためのソフトマター物理学を学習し、ミクロからマクロスケールまで様々な有機化合物の特性を数値化するデータサイエンス技術を身に付ける。
各回の講義時に配布する資料を用いて講義形式ですすめる。講義内容の理解と定着を図るために、数回演習問題を配布しつつ、最近の応用例を調べるグループワークを併せて実施し、その内容のプレゼンテーション・質疑応答を通して知識の深化を図る。演習課題については講義内で解説する。
DP1、DP2
回 | 項目 | 内容 | 担当者 | 日時 |
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1 | 電子状態の計算科学 | 原子・電子の取扱いにおける粒子性と波動性を理解し、Schrödinger方程式から電子波動関数の数値解法とHückel法について学ぶ。 | 石井 良樹 | 9/11③ |
2 | 基底関数と分子積分1 | 基底関数の表現方法と分子積分の数値解法を学ぶ。 | 石井 良樹 | 9/18③ |
3 | 基底関数と分子積分2 | 様々な分子種で設計された基底関数系とその精度を学ぶ。 | 石井 良樹 | 9/25③ |
4 | Hartree-Fock法1 | Slater行列式を用いて電子ハミルトニアンの解法を学ぶ。 | 石井 良樹 | 10/2③ |
5 | Hartree-Fock法2 | 変分法を用いてHartree-Fock方程式を理解する。 | 石井 良樹 | 10/9③ |
6 | 密度汎関数法1 | 電子密度とエネルギー汎関数の取り扱いを理解し、Hohenberg-Kohnの定理を学ぶ。 | 石井 良樹 | 10/16③ |
7 | 密度汎関数法2 | 変分法を用いてKohn-Sham方程式を理解する。 | 石井 良樹 | 10/23③ |
8 | 密度汎関数法3 | 交換相関汎関数を学び、電子の相互作用における交換項と相関項の取り扱いと近似レベルを理解する。 | 石井 良樹 | 10/30③ |
9 | 電子状態の物性解析1 | 電子状態から安定構造と分子間力の解析手法を学ぶ。 | 石井 良樹 | 11/6③ |
10 | 電子状態の物性解析2 | 様々な分子間力における基底関数系の影響を学び、実在系の再現性を理解する。 | 石井 良樹 | 11/13③ |
11 | ソフトマターの特徴 | ソフトマターの特徴、基礎的概念について理解する。 | 渡辺 豪 | 11/20③ |
12 | ソフトマターにおける相分離 | 相図、溶液の混合自由エネルギー、高分子溶液の相分離、Flory-Huggins理論について学ぶ。 | 渡辺 豪 | 11/27③ |
13 | ソフトマターにおける熱統計力学 | 高分子鎖の性質、理想鎖の統計、セグメント間の相関について学ぶ。 | 渡辺 豪 | 12/4③ |
14 | ソフトマターの相転移 | 高分子における状態変化、ガラス転移、高分子の単結晶化、液晶について学ぶ。 | 渡辺 豪 | 12/11③ |
15 | ソフトマターの計算科学 | ソフトマターの計算科学における応用例を学び、どのような分野において効力を発揮するかを理解する。 | 渡辺 豪 | 12/18③ |
液晶・高分子の物性解析に用いられる量子化学と凝縮系物理学の基礎理論が理解できる。
特に有機分子系の量子計算で一般的なHartree-Fock方程式やKohn-Sham方程式の基礎理論を修得しつつ、これまでに様々な分子系で検証されてきた基底関数系や交換・相関汎関数の取扱いとその近似精度を理解できる。また、ソフトマターにおける基本的な性質、熱力学的性質、統計力学的な扱い、相転移、さらに、量子化学計算、分子動力学計算などに代表される計算科学を用いて、ソフトマテリアルを対象とした研究を行うための基礎技術を身に付けることを到達目標とする。
授業にて実施するレポート課題の消化状況(50%)とプレゼンテーション(50%)の成績から総合的に評価する。
【講義時間外に必要な学習の時間:60 時間】
予習:前回の講義時に指定された事柄について自身で調べておくこと。
復習:教科書と配布資料を読み返し、理論式の展開を復習しておくこと。
・演習問題については、次の講義で解説を実施する。
・応用例を調べるグループワークを実施し、15回目にて行うプレゼンテーションを通して議論を交わし、質疑応答を経て計算手法の理解を深める。
【関連科目:分子シミュレーション特論、生物物理学概論】
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 配布資料あり | ||
参考書 | 手で解く量子化学Ⅰ,Ⅱ | 中井 浩巳 | 丸善出版 |
参考書 | 有機分子の分子間力 | 都築 誠二 | 東京大学出版会 |
参考書 | 原子・分子の密度汎関数法 | P. G. パール・W. ヤング | 丸善出版 |
参考書 | ソフトマター物理学入門 | 土井 正男 | 岩波書店 |